今月のBOOK

(2004年 11月号)


〜舞城王太郎特集〜

1973年 福井県生まれ。
2001年、「煙か土か食い物 Smoke,Soil or Sacrifices」で
第19回メフィスト賞を受賞し、デビュー。
2003年、「阿修羅ガール」で、第16回三島由紀夫賞を受賞。




どちらかというと、今まで「キレイ系純文学」を好んできた自分にとって、
マイジョウの作品を読むのは、ちょっと勇気がいった。
(だって、江國香織さんとか、川上弘美さんが好きな私だよ;)
それでも何とか読み始めたけど、途中でマジ投げようかと思った。
でも、もともと、食べ物に好き嫌いはない自分。
本だって、食ってみなけりゃわからんでしょ?ってことで、口に押し込んでみたものの
あまりのえぐさにウッとなる。
(テルちゃんの「下品で不潔」という酷評もわかる気が・・)

しか〜し、ここで、吐いたら、一生食えんようになるで〜と、無理やり押し込む。
わずか半月の間に、完食してないものも含めて、6作品飲み込んだわけだが、
もどしそうになる→押し込むの過程を数回繰り返し、
結局、出すことも吸収することもできず、消化不良のまま腹をさすっているというのが、
正直今の状態、かな?

でも、遅読を誇る私に、短期間で同じ著者の作品を立て続けに読ませたのは、
篠田節子女子に引き続き、彼が二人目。
とにかく、先へ先へと読み進めさせる筆力とスピード感は、さすがとしかいいようがない。
篠田女子の場合、自分は、「ホラーだ」と叫んでいるにもかかわらず、
直木賞をとって、すっかりジュンブン系におさまっているようだが、
マイジョウの場合は、どうなの?
殺人あり、バイオレンスあり、エロスあり、猫のしっぽ切りあり、究極はハンニバルありで、
一体ミステリーなのかホラーなのか、はっきりしろよ〜と叫びたくなる雰囲気だが、
彼にとって、そんなものは舞台上の小道具に過ぎなくて、
結局のところ、いいたいことは、ただ一つっきり。だしょ?
ということで、彼のジャンルは「隠れジュンブン」に決定〜!!
「好き好き大好き超愛してる」(未読破)は、この前の芥川賞候補になったのに、
結局モブ・ノリオの「介護入門」にとられちゃった。
もし、受賞していたら、正々堂々ジュンブンだったのに。
そしたら、郷里の県立図書館の郷土資料室にも、
水上勉、津村節子、藤田宜永らと肩を並べて、顔写真つきの特設コーナー作ってもらえるのに。
(あっ、彼、顔も声も隠した覆面作家だっけ?)

でも、マイジョウは、ちゃんとこう言ってる。
「文章のテクニックで到達できるのなんて文学賞とかベストセラーぐれえやぞ。
人の心本当に掴もうと思うたら自分のことリアルに書くんや。
自分の大事なもん惜し気もなく切り売りしてまうんや。血とか汗とか魂の切れ端とか、
文章になすりつけてまうんや」
〜「煙か土か食い物」 P285〜

で、ほんとうやろな。
あと、何年かして、銀座の受賞バーティーの2次会で飲んだくれて、エヘラエヘラしてたり、
東京のドデカイ書店で、横にきれいなオネーさん立たせて、さらさらサイン会してたりしてたら、
ゆるさんざ。
あんたの血肉になってるのは、生まれ育ったここやろ?
クラシック流れるようなキレイなお店のキレイなお皿の上に、自分のダイヤモンド見せるのは、
そういうとこで生まれ育った人に任せて、
マイジョウには、田んぼの泥の中で、クソまみれになりながら、
落としたダイヤモンド見せてちょーだいって言いたいの。(オッ、オバサン; ちょっと支離滅裂)

家族愛、友愛、男女の愛
マイジョウが描く愛は、セカチュウの愛なんかより確かにぐっとくるんだけど、
もっとすごい愛もあるんだぜ。
彼が、年齢を重ねていって、今思っていることが変わっていくのか、不変なのか
そこんとこ、すごく興味がある。
だから、これからもがんばって書いてちょーだいね。
ナンマンダーブッ★

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私が飲んだ、またはお手つきにした作品(2004・10月現在)

「世界は密室でできている」 2002年 4月刊行
「熊の場所」 2002年 10月
「山ん中の獅見朋成雄」 2003年 10月
「煙か土か食い物 Smoke,Soil or Sacrifices」 2001年 3月
「阿修羅ガール」2003年 1月
「好き好き大好き超愛してる」 2004年 8月